早十昊平のボーカルコーチング_048

今日取り上げる曲は

BONNIE PINKの
『冷たい雨』

です。

今日は

何となく英語っぽく歌うとカッコいい?

というテーマです。

まずは1コーラス(1:30ぐらいまで)
お聴きください。

 
※映像は見ないでください。

色々とイメージが引っ張られますので。

 
 

 

『(アタマサビ)
打たれてぶたれて 冷たい雨に
けれどこの血は まだ熱いんだ
打たれてぶたれて 身も心も
叫ぶ なおさらまだ生きたくて

(Aメロ)
真っ直ぐに伸びたナツツバキ
迷わずに上に向かってく
器用じゃないけどひた向きに
働く背中を見せたくて

(Bメロ)
くたびれて乾いてる心に
chilly chilly rain(冷たい冷たい雨)
ざけんなって言いたいよ
残りの力で

(1サビ)
打たれてぶたれて 冷たい雨に
けれどこの血は まだ熱いんだ
振られて降られて この寒空に
募る思いは まだ冷めなくて』

 
 

このBONNIE PINKは、
ウィキペディアの情報では、
日本人のようですね。

でも、
あえて、粘りのある歌い方を選択し
“英語っぽく”しているようです。

 

アタマサビの2行目が
分かりやすいですね。

 

『けれど』が『けぇ れぇ ど』

『熱いんだ』が『あつ〜ぅいんだ〜』

(小文字のところです)

 
 
良く言えば、
演歌で言うところの「こぶし」

 

悪く言えば、
それしか個性を出す方法が無かった…
とも言えます。。

 
 
4行目の『まだ』の『だ』も
『だ』とは発音しているのですが、

….母音に違和感を感じます。

「暑い」「しつこい」イメージがあります。

 

あなたは
どう聞こえましたか?

 
 
このような歌い方をされるアーティストさんも
多数いらっしゃいます。

ロック系には多いですね。
(吉川晃司さんや氷室京介さんは代表的ですね)

なので、歌い方としては
確立されているというか、
市民権を得ているというか、
あって良いものだと思います。

 
 

でも、この曲については、

この声と
このメロディーと
このアレンジ

 

この3点が揃ったときに
この歌い方を選択するかどうか…?

 

私だったら100%しないですね…。

その“英語っぽいカッコ付け”を
魅力の一つとして前面に押し出さなくとも、
もっと他に方法があったのでは?

と思います。

(そもそも声がカッコいいので
味付けはアッサリで良かったのでは、、
と思います。。。。)

 
 

こういった感覚のズレは、
聞いて下さるお客様にも発生します。

それが大きければファンに
なってもらえないですし

ズレが無ければ好きになってもらえる
可能性が高くなります。

 
 
 

あくまでも、

この歌い方がダメという訳じゃないですよ。

私が好まないだけです。

 
 
 

最後にもう1つ。

『打たれて』の『う』が
いきなり聞き取れませんでした。

これは、ディレクションミスの
ような気がします。

母音の『う』が他の母音に比べて
聞き取りづらいのは、
歌を歌っている人やその周りのスタッフには
常識と言えることです。

それでも、見落とした?
それともあえて?

ちょっと謎です。
 

レコーディングの時は
歌い手もスタッフも
この曲を何度も何度も聞いてます。

そうするとアタマに歌詞が
しみ込んでいる状態ですので
聞こえづらいことに
気付きにくくなります。

あたまで勝手に
足を追いかけながら
聞いてしまう状態です。

(私も常に注意しています。
それもかなり強めに意識しています)

初めて聞く人に届けるのであれば
少し配慮すべき点だったと思います。

 
 
それらも含めて、
この作品なので
あとは聞く人次第ですが。

 
 
 

今日は厳しめの話でした。
(ファンの方、ごめんなさい)

 

 
ではまた!

 

このブログは、録音エンジニアで音響家の早十昊平が、人様の歌に好き勝手にケチをつける、、、じゃなかった、プロの歌録音の現場で日々行っているディレクションをもとに音楽を分析したものです。題材として取り上げている音楽やアーティストには敬意はありますが敵意はありません!むしろ好きです!!