早十昊平のボーカルコーチング_039
今日の1曲は
Sonar Pocket
『あなたのうた』
です。
良い曲ですね。
とてもまっすぐな感じが好きです。
今日は
言葉とメロディのアクセントの矛盾
のお話です。
まずは1コーラスお聴き下さい。
(あたまサビ)
『会うたびあなたに魅かれていきます
明日もますます会いたくなります
あなたに会うたびそのたびに
会うたびふたたびそのたびに
(Aメロ)
月火水木金土日 止まることない時間足早に
過ぎていく中で疲れて 負けそうになって
でもいつも心にあなた居て
「今日もまた頑張ろう」って思えて
本当いつも支えてくれて感謝してるよ
(Bメロ)
あなたと出会い強くなれた
あなたと出会い 毎日を生きる意味
見つけたよ 大切な人
(サビ)
会うたびあなたに魅かれていきます
明日もますます会いたくなります
あなたに会うたびそのたびに
会うたびふたたびそのたびに』
Aメロ(0:40)を
分解していきます。
『月火水木金土日』の
『もく』の『く』
に注目して下さい。
無声音になっています。
無声音とは
母音が無くなっている状態です。
ローマ字で書くと分かりやすいです。
[ M O K U ]
ではなく
[ M O K ]
になっています。
なっていますが
これは良いと思います。
歌詞を伝えたい、
と考えた場合に、
この流れで
『月火水木金土日』
だと分からない方は
ほとんどいないと思います。
なのでOKです。
では次の
『とまる』に注目して下さい。
ちょっと滑舌が悪く聞こえてしまっています。
実際には、滑舌は悪くないのですが、
そういう印象を与えてしまいます。
『とまる』の部分のメロディは
アウフタクト(弱起)なので
音楽的に弱くなります。
(これは変えようのないものです)
次の『ことない』の『こと』が
1拍目になるので、
メロディのアクセントは『こと』にあります。
しかし言葉としては、
『止まることない』ですから、
『と』もしくは『とま』が
しっかり聞こえないと
意味は伝わりづらいですね。
これが日本語の歌詞に起こりがちな、
メロディと言葉のアクセントの矛盾です。
実際にこのソナポケの歌は
この矛盾を解消するために
『とま』を少し意識して
しっかりハッキリ
歌っているように聞こえます。
その結果『る』が少し
引っ込んだのかなと思います。
『る』は
子音がはっきりしない「R」で
母音がもっともパワーの無い「U」なので
引っ込みやすいんですよね。
次の
『時間足早に(じかんあしばやに)』
の部分も同じように、
『し』にメロディのアクセントが来ますが、
言葉としては『あ』にアクセントが
欲しいところです。
そのほうが歌詞が
分かりやすくなりますよね。
ここも、
ちょっと目立たせた『あ』が
必要です。
実際このボーカルも『あ』を
目立たせるよう発声してます。
でも、やりすぎると、
変な強調になりますし、
やらないと伝わりにくい歌になります。
このさじ加減は難しいです。
完成した作品を聞くと
とても自然に聞こえるので
無意識に通り過ぎてしまいますが、
歌い手にはこのような
テクニックは必須です。
私が録音でディレクションを
するとしたら
『あ』を、
大きめに!
声の立ち上がりは早く!
でもあたたかく!
というような指示をすると思います。
『足早に』は
無機質な単語なので、
あたたかさを入れ込みたいのです。
そうすることによって、
サビの素敵な歌詞が
もっと活きてくるかな
と、ちょっとだけ思いました。
今日は1曲のうちの
Aメロの一行目だけで
語り尽くしました。
プロの歌って、
こういう細かいテクニックの積み重ねで
成り立っているんですが、
1曲作り上げるのはホント大変ですね。。。
ではまた!
このブログは、録音エンジニアで音響家の早十昊平が、人様の歌に好き勝手にケチをつける、、、じゃなかった、プロの歌録音の現場で日々行っているディレクションをもとに音楽を分析したものです。題材として取り上げている音楽やアーティストには敬意はありますが敵意はありません!むしろ好きです!!